2007-07-24 01:00:00
2007-07-19 06:35:24
2007-07-09 22:13:00

私は太平洋戦争に関する書物を読むのは正直これが初めてでした。
新聞の広告欄にあった題名を見て(面白そうだな)と思い、図書館で借りてきました。
太平洋戦争中の1942年3月、武士道を発揮し、海を漂流していた英兵422名を救出した工藤少佐の物語です。
そのエピソードは確かに感動的なものだったのですが、私がこの本を読んで興味深かったのは、大正から昭和初期にかけての、日本の海軍を軸に書かれている当時の世相でした。
また、決して戦争を美化するわけではありませんが、海軍のリーダーの言葉や組織でのルールなども、現在に生きる私達にも十分通じるものだなあと感じました。
上に立つ者の心構えや、組織の在り方などについても考えさせられました。
戦争モノの書物を読むとよく出てくる話ですが、現場で戦っている兵士とその作戦を机上で立案しているだけの上層部とのギャップがこの本の中にも出てきます。司馬遼太郎の「坂の上の雲」にも日露戦争にまつわるそうした話が出てきますが。
現場では今までの作戦はもはや通じなくなっているのに、下士官は上官に具申できず本部に伝わらない。本部も現場の様子がわからないから机上の作戦だけでもって対応し、現場を理解しようという努力が足りない。
これは会社経営にも当てはまるのではないでしょうか。
企業はいかに「顧客」という現場を理解しているか。顧客という現場の変化をよく知らないまま今までと同じ作戦を続ける。それではいつか現場の変化について行けなくなる。
このようなことは過去の戦争で何度となく繰り返されてきたことで、いかに組織内の情報伝達が大切であるか考えさせられました。
上に立つ者の心構えも、海軍のリーダーの人物像や海軍学校の様子などを通じて描かれているのですが、それらのなかからひとつここに書きたいと思います。現在の海上自衛隊幹部候補生学校でも継承されているという、「五省」という教えです。
一、至誠に悖(もと)るなかりしか [悖る:そむく、さからう]
一、言行に恥ずるなかりしか
一、気力に欠くるなかりしか
一、努力に憾(うら)みなかりしか [憾み:後悔すること、悔やむこと]
一、無精に亘るなかりしか
まったくこうしたことが「なってない」私ですが、なるほどなあと考えさせられました。
この本の主人公である工藤少佐はリベラルで温厚な人物に描かれていて、私は好感を持ちました。こんなリーダーになれたらいいなと思います。
多くの先人の苦労があって今の日本があるのだと改めて感じ、私のような者でも背筋が伸びる思いでした。この本に出会えて幸運でした。

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B型人間の本棚
2007-07-03 06:28:07
先月の日本経済新聞の「私の履歴者」はニコン相談役の吉田正一郎さんでした。ちなみに今月は長嶋茂雄さんなので楽しみです。
さて、その吉田さんが書かれていた中で印象に残ったことがあったのでここに記したいと思います。
それが表題の「一隅を照らす」という言葉です。
私にとっては聞いたことがあるようなないような、そんな言葉だったのですが、この文を読んで意味を知りました。吉田さんの文をここに抜粋させていただきます。
「『一隅を照らす』という好きな言葉がある。幼少のころ、父に連れられていった上野の天王寺で住職にその話をうかがった。人々がそれぞれ自分の持ち場で努力して自らを輝かすことができれば、世界全体が明るくなるという教えだ。この教えに背いたことは一度もなかった。」
というものです。
なかなか難しい現在の世の中ですが、私も自分の身の回りのわずかながらの「一隅」を照らし、自分の回りを少しでも明るくできるように生きていければなあと思いました。